マイクロソフト社長、AI規制を主導する国として英国を評価
導入
生成AIの普及が進む中、AIガバナンスの議論は「責任ある開発」という理念から、具体的な義務をどう設計するかという段階に移りつつある。マイクロソフトのブラッド・スミス社長はBBCのポッドキャストで、AIはツールである一方、兵器にもなり得ると指摘した。サイバーセキュリティへのリスクを踏まえ、世界共通の安全ルールを導入する時期が来たという。さらに、米国や欧州連合よりも英国が国際的な安全ルールを主導しやすいとの見方を示した。
主なポイント
- 自主的な約束には限界がある。 米国政府が主催した議論では、複数の大手企業が独立監査人と協力する「道義的拘束力」を持つ文書に署名した。スミス氏は前向きな一歩と評価しながらも、法的な規制の代替にはならないと説明する。自主的に守るのは、すでに責任ある企業である可能性が高いためだ。
- 英国には評価の基盤がある。 2023年に発足した英国AI安全研究所は、米国の先端AI研究所から、公開前の主要モデルにアクセスして安全性を検証してきた。モデル評価におけるこの立場が、英国の国際的な存在感につながっている。
- 義務を具体化する必要がある。 スミス氏は、AIエージェントによる不正な侵入やシステム侵害が起きた際、関係機関へ報告する法的義務を提案した。また、製品公開前の外部評価や、人間が制御を失った場合にシステムを一時停止・減速させる仕組みにも肯定的だ。
- 英国の政治的な位置が利点になる可能性がある。 同氏によれば、ワシントンはロンドンをブリュッセルと同じようには見ていない。この距離感が、米国企業、欧州当局、各国政府の橋渡しに役立つ可能性がある。
意味と影響
今回の発言は、AI安全策を企業の善意に委ねるだけでは不十分だという認識が、業界側にも広がっていることを示す。公開前の検証、事故の報告、緊急時の停止は、将来、先端AI製品を提供する際の標準的な手続きになるかもしれない。その場合、企業は安全性を主張するだけでなく、外部機関による検証結果や、重大事象への対応計画を示す必要がある。
一方、英国が本当に国際的な調整役になれるかは、米国のAI研究所との協力が安定して続くかに左右される。報道では、米国側の政治的圧力を背景に、英国の評価機関が最新モデルへアクセスできるか一時的に不透明になったが、同研究所は最新モデルを引き続き利用・評価できると説明している。英国の優位性は、技術力だけでなく、国際的な信頼と実効性のある権限によって初めて維持される。
自主規制と政府規制は、必ずしも対立するものではない。企業は技術や評価手法を提供し、政府はすべての開発者に適用される最低限の安全基準を定める。その組み合わせによって、革新を止めずに、制御不能のリスクへ説明責任を求めることが重要になる。
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