ClawProBench:AIエージェントを実行過程から評価する
導入
AIエージェントがファイルを読み書きし、ツールを呼び出し、メッセージを送り、予定を登録し、別のエージェントを起動するようになると、最終回答だけでは能力を十分に測れない。正しい結果に到達していても、根拠のない情報を使ったり、誤ったツール経路を選んだり、安全制御を迂回したりする可能性がある。また、1回だけ成功して次の試行で失敗することもある。ClawProBenchは、評価対象をモデル単体からモデルとランタイムの構成へ広げ、実行トレースを残すことでこの問題に取り組む。
主なポイント
- 評価単位を拡張した。 失敗を、証拠の取得、ランタイムのルーティング、安全境界、反復実行などに分けて分析する。同じ最終回答でも、経路の安全性や再現性によって評価は変わる。
- 実際のランタイム機能を対象にする。 OpenClawを基盤とし、ワークスペースツールに加えて、ブラウジング、メモリ、メッセージ、スケジュール、スキル、サブエージェントなどのネイティブ機能を扱う。
- 2つの評価トラックを持つ。 完全プロファイルは102シナリオで、ライブなワークスペースとネイティブ機能の経路を評価する。凍結ホールドアウトは68シナリオで、閉じた世界のJSON出力契約を採用し、比較の安定性を高める。
- 過程を含めて採点する。 トレースから正確性、プロセス品質、効率を評価し、安全ゲートを適用する。失敗の証拠も監査用に保持される。
- 再現性を重視する。 ホールドアウトでは、少なくとも1回成功するpass@k-anyが0.6638だった一方、3回すべて成功する厳格な指標は0.2890だった。
結果と意味
完全プロファイルでは68構成、ホールドアウトでは37構成を評価した。安全性を考慮した平均トレーススコアの最高値は0.7671だった。ワークスペースのライブ課題は0.6415、ネイティブランタイム課題は0.5238で、後者の方が低い。これは、ランタイム固有の状態管理、ツール選択、経路制御が新たな失敗要因になることを示唆する。
両トラックのランキングのSpearman相関は0.1300にとどまった。正確性だけで並べた順位も、プロセス品質、安全ゲート、厳格な反復成功を含めた順位とは大きく異なる。単一の正解率をエージェント能力の代表値とみなすことへの注意が必要だ。
今後への示唆
ClawProBenchの重要性は、ベンチマークの設計方法にある。評価ではモデル名だけでなく、ランタイム、ツール、権限、状態、反復回数まで明示すべきだという主張だ。トレースがあれば、推論、根拠収集、ツール選択、認可のどこで問題が起きたかを調べられる。実運用では、偶然の成功よりも、複数回にわたる安全で一貫した成功の方が重要になる。
ただし、本研究はOpenClaw上で実装された評価であり、結果はそのインターフェースと前提に依存する。異なるランタイムを横断して比較するには、再現可能な環境と共通の安全判定が必要だ。それでも、「正しい答えか」だけでなく、「安全か、効率的か、安定して再現できるか」を問うべきだという方向性は明確である。
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