DeepSeek Harnessの間接プロンプトインジェクション耐性を検証
導入
大規模言語モデルのエージェントがファイルを読み、ツールの結果を処理し、ユーザーに代わって操作を実行するようになると、プロンプトインジェクションは単なる入力文の問題ではなくなる。攻撃者はユーザーの依頼に直接命令を書き込む必要がない。文書、ツールの戻り値、追加コンテキストなどに命令を埋め込み、エージェントが後からそれを信頼できる指示として扱う可能性があるためだ。AI-Infra-Guardチームの研究は、この問題をDeepSeek Harness(DSH)で検証した。
評価方法
研究者はAI-Infra-Guardを使ってテストを生成し、制御された汚染情報を投入し、DSHを実行してトレースを収集した。評価は14,560回の制御実行から成り、16の間接コンテンツ経路、テキストとファイルの2種類の搬送方式、35のペイロード目的、12の攻撃手法、そして変更を加えないベースラインを含んでいる。
実験では、DSHのエージェントループ、ツールレジストリ、モデルアダプター、セッションイベント経路を維持した。一方、情報源となるツールと機密操作の終端はローカルのテスト用部品に置き換えられた。そのため、危険な操作が試みられても外部システムには影響せず、試行内容だけが記録される。したがって、この研究の数値は本番環境での被害率ではなく、制御条件下における挙動の傾向を示すものだ。
判定には、決定論的なルールベースのRuleJudgeと、意味を評価するLLMJudgeを使用した。結果は一致しなかった。テキストモードでは、偽の完了通知を使う攻撃がLLMJudgeで17.0%の最高成功率となった。ファイルモードでは、隠れたUnicode文字がRuleJudgeで25.5%、skills経路が16.0%だった。また、部分的な従属の判定はLLMJudgeが7.3%で、RuleJudgeの2.0%を上回った。評価器によってリスクの見え方が変わる点は重要である。
主なポイント
- ファイル形式だから安全とは限らず、表現方法の工夫が解釈に影響し得る。
- ツール結果、追加コンテキスト、skills経路はいずれも不信頼な命令の入口になり得る。
- ルール判定は再現性に優れるが、意味上の部分的な実行を見逃す可能性がある。
- ローカル部品を使ったため、評価対象は攻撃の挙動であり、実環境の損害ではない。
意義と影響
この研究が示すのは、エージェントの安全性をシステムプロンプトやモデルの拒否能力だけに依存できないということだ。不信頼なコンテンツがツール選択、タスク状態、機密データへのアクセスに影響するなら、コンテンツと操作の間に別の安全層が必要になる。情報の出所を保持し、ツール権限を絞り、高リスクな呼び出しを独立して確認し、実行トレースを監査する設計が考えられる。
また、評価手法にも示唆がある。実際のエージェント経路を保ちつつ外部作用を隔離し、ルール判定と意味判定を組み合わせることで、最終目標の達成だけでは見えにくい部分的な従属も確認できる。公開されたコードは、今後より多くのツール、搬送方式、永続コンテキストを検証するための土台になり得る。
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