記事一覧へ戻る
オープンソース

Thinking Machines、初のオープンウェイトモデル Inkling を公開

読了目安 3 分

導入

元 OpenAI CTO の Mira Murati 氏が創業した Thinking Machines Lab が、初の本格的な公開モデルとなる Inkling をリリースした。OpenAI、Anthropic、Google の主力モデルが閉じた汎用チャットボットとして展開されているのに対し、Inkling はオープンウェイトで提供される。開発者や企業はモデルをダウンロードし、直接実行・改変できる。これは単なる新モデル発表ではなく、「一つの AI がすべての企業に合う」という考え方への挑戦でもある。

主要ポイント

  • オープンウェイトを前提にした設計:Inkling は完成済みのチャットサービスというより、企業が自社用途に合わせて調整するための土台として位置づけられている。
  • 大規模な混合エキスパート構成:総パラメータ数は 9750 億だが、各タスクで使われるのは約 410 億。大規模モデルの能力を保ちながら、推論コストと速度を抑える狙いがある。
  • マルチモーダル訓練、出力は当面テキスト:同社によれば、Inkling はテキスト、画像、音声、動画を含む 45 兆トークンで訓練され、複数モダリティをまたいだ推論が可能だ。ただし現時点の出力はテキスト、コード、整形された成果物、構造化データに限られる。
  • 不確実性を示す応答:モデルは分からない場合に推測で埋めるのではなく、不確実性を示すよう設計されている。また、ユーザーは「思考努力」を調整し、速度と推論品質のバランスを選べる。
  • 最強ではなく、改造しやすさを重視:Thinking Machines は Inkling が現時点で最強のオープンまたはクローズドモデルではないと明言している。売りは総合的な性能と適応性だ。

意味と影響

Inkling の重要性は、単に大きなモデルが出たことではない。企業が AI に入力するプロンプト、修正、業務知識が、外部プラットフォームに蓄積されることへの懸念が高まる中、Thinking Machines は「組織が自分たちの知識でモデルを形づくる」方向に賭けている。

その中心にあるのが Tinker だ。Inkling の重みが公開されるなら、収益の柱はモデルそのものの利用料ではなく、訓練、微調整、ホスティングを含むカスタマイズ基盤になる。これは API 利用量に課金する閉鎖型モデルとは異なる経済モデルであり、固定された汎用モデルを売るのではなく、企業が自社専用 AI を作る過程を支援する発想に近い。

一方で課題もある。微調整には高度な機械学習人材が必要で、安全性やガバナンスの責任は利用企業側にも重くのしかかる。また同社は、初期の事後訓練データの一部生成に Moonshot AI の Kimi K2.5 など他のオープンウェイトモデルを使ったことを認めている。ただし次世代モデルでは完全に自己完結した事後訓練を目指すとしている。

Inkling は、企業 AI の重心が少しずつ変わっていることを示す。最先端の閉鎖モデルは実験や高価値タスクで使われ続ける一方、多くの本番用途はプライベート、オープンウェイト、あるいは深くカスタマイズされたモデルへ移る可能性がある。Thinking Machines の問いは明確だ。企業にとって重要なのは「最強のモデル」なのか、それとも「自社のものにできるモデル」なのか。

出典:TechCrunch AI

コメント

ログイン状態を確認中…

コメントを読み込み中…

関連記事

CCTest · Blog
GPT-4o退役から8カ月、ユーザーはなお保存を求めている
オープンソース
cctest.ai
オープンソース

GPT-4o退役から8カ月、ユーザーはなお保存を求めている

GPT-4oがChatGPTから姿を消して約8カ月が過ぎても、保存やアーカイブ、重みの公開を求める動きは続いている。支持者が惜しんでいるのは、性能だけでなく、自然で温度のある対話体験でもある。

続きを読む
CCTest · Blog
AIによる無効な報告が急増、Googleがオープンソース向けバグ報奨金制度を一時停止
オープンソース
cctest.ai
オープンソース

AIによる無効な報告が急増、Googleがオープンソース向けバグ報奨金制度を一時停止

Googleは、自動化された脆弱性報告が大幅に増え、その大半が有効ではないとして、オープンソースソフトウェア向けの脆弱性報奨金制度を一時停止した。

続きを読む